不法行為によって死亡した被害者の相続人が遺族補償年金の支給を受けた場合の損益相殺
平成27年3月4日最高裁判所大法廷判決(最高裁ホームページ)は、被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,遺族補償年金につき,その塡補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきであり、その支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その塡補の対象となる損害は不法行為の時に塡補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当であるとしました。
コメント 損害額算定の実務に必要となる判例です。
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有責配偶者からの離婚請求が認められた事例
有責配偶者による離婚請求が認められた事例
東京高判平成26年6月12日(判例時報2237-78)
二人の未成熟子がいる夫婦のフランス国籍の妻が,子二人を連れて別居した後,日本国籍の夫に対し,婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚を請求した事例
夫も妻の自宅立ち入りを拒否し,妻の残した物の廃棄を通告したり,妻が外国人男性宅から出てきた際に暴力沙汰になったこと,夫婦共に関係修復のための具体的行動はとっておらず,夫も離婚に備えた準備をしていることなどから,婚姻関係修復の見込みはないとして,破綻を認定し,「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると認めた上,夫婦関係の決定的な破綻は妻の不貞行為によるものであり妻は有責配偶者ではあるが,夫には安定的な収入があり離婚請求を認めても著しく社会正義に反する結果がもたらされないこと,妻の不貞行為は夫が離婚を切り出したり人格に配慮せず妻を追い詰めたことにも原因があること,離婚を認めても未成年者の福祉が殊更害されることはないこと,夫ももともと離婚を求めていたこと,などから,有責配偶者からの離婚請求であっても社会正義に照らして到底許容できないというものではなく,信義則に反するものではない,として,原判決を取り消し,離婚請求を認容しました。
退職後の競業について不法行為が認められた事例
退職後の競業について不法行為が認められたケース
広島高判平成26年4月16日(判例時報2230-36)
Yらは学習塾を経営する株式会社Xにおいて生徒らの学習指導を担当していたが平成21年3月から6月までの間にXと競合する新しい塾の設立ないし準備行為を行い,塾生及び保護者らを新設する学習塾へ入塾するよう勧誘し,Xの塾生を退塾させたためYらの行為は不法行為にあたるとしXはYらに対し2273万円余の損害賠償(塾生の退塾による逸失利益)を請求した事例
本判決はYらはXと競合する新しい塾の設立ないし設立準備行為を行ったとして不法行為責任を肯認した上で損害額を1審判決より減額し280万円余(塾生43人分の8ヶ月間の授業料等から経費相当額を控除した額)の支払を認める限度でXの請求を一部認容しXの附帯控訴を棄却しました。
相続放棄の熟慮期間の起算点が債務の存在を知った時点とされた事例
相続放棄の熟慮期間の起算点を債務の存在を知った時点とした事例
東京高裁決定平成26年3月27日(判例時報2229-21)
平成22年8月8日に死亡した被相続人の相続財産について,長女や二女は,生前,被相続人が自己の財産を長男に譲る意向を示しており,債務の存在は知らず,長男が一切を相続し,自分たちには相続すべき財産がないものと信じており,長男が被相続人が所有していた不動産の移転登記をするために,その依頼に応じ遺産分割協議証明書に署名・押印したものの,相続放棄の申述はもとより実際には遺産分割協議もしていなかったところ,爾後,被相続人の相続財産に債務があることがわかったため,平成25年4月2日,家庭裁判所に相続放棄の申述をした事例
抗告人である長女及び二女には,相続すべき財産がないものと信じていたことが認められ,そう信じることには相当な理由があったと判示し,そして,現実に遺産分割協議がなされたものではないから,抗告人らの熟慮期間の起算日は,同人らが債務の存在を認識した平成25年3月26日であるとして,相続放棄の申述を受理しました。
定期金賠償が認められた事例
定期金賠償が認められた事例
福岡地判平成25年7月4日(判例時報2229-41)
事故当時2歳7か月であった子供が,交通事故により胸髄損傷,左大腿骨骨折等の傷害を負い,また,症状固定時に6歳となった同人は,後遺障害として,胸髄損傷による両下肢完全麻痺(運動,知覚),神経因性膀胱に伴う排尿障害が生じ,後遺障害第1級1号に該当すると判断されたケース
将来介護費等については,被害者側が,定期金賠償の方法を強く希望していることに加え,将来にわたって定期的に支出を要する費用であり,被害者の年齢に照らし,その介護期間は相当に長期間に及ぶことが予想され,定期金賠償による賠償方法になじみやすいことを考慮すると,これらの賠償については,定期金賠償の方法により賠償することを命じるのが相当として,将来の介護費用等について,定期金賠償の方法による賠償を命じました。
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